車検証を、
自分の手で。
書類に四十分。最後の検査で、不合格。
それでも、その日のうちに持ち帰れた。
初めて自分で車検を受けた、一日の話。
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十六歳の、最初の一台。
私がバイクの免許を取ったのは16歳。誕生日に学校を休んで取りに行った、原付免許だった。
その週の日曜日、小遣いを貯めた2万円を持って、上野の中古車街へ出かけた。帰りは、50ccのクラッチ付きのボロいバイクに乗っていた。
そこから私のバイク人生が始まった。間を空けながらも、この歳になるまで何台ものバイクを乗り継いできた。
今乗っているのは、スズキのSV1000S。その中でも、いちばんパワーがあって、いちばん手強い一台だ。
深い前傾姿勢に、アクセルを開けると蹴飛ばされたような加速。手に入れて数回乗ったところで、私には手強すぎたと分かった。
それでも週に一度は引っ張り出し、近くの峠へ向かう。修行のように走り、疲れ果てて帰ってからビールを飲む。緊張の残った体に、それが染み通った。

その夜、予約してしまった。
そんなバイク乗りの私にも、二年に一度、悩ましい時期がやってくる。
車検だ。
定期的な点検は、バイク屋に頼んでいた。それでも車検が近づくと、どうしたものかと考えた。
店に任せれば楽だ。ただ、費用は五万円以上かかる。
以前、頼んでいない部品まで交換され、八万円を超える請求を受けたこともあった。納得できず、無断で交換された部品は元に戻してもらった。それでも六万円だった。
ユーザー車検という方法があることは、知っていた。
自分でバイクを持ち込み、自分で検査を受ける。費用も抑えられるらしい。
けれど、何を準備して、どこへ行き、何をすればいいのか。そこまでは知らなかった。
そうして、また車検の期限が近づいていた。
ある夜、ネットでユーザー車検の記事を読んだ。いくつか読んでも、断片的で、どうも全体の要領がつかめない。
それでも、その夜の私は妙に挑戦的な気分になっていた。
翌日は休みだった。最寄りの運輸支局の予約を調べると、明日の枠が空いている。
私は、そのまま申し込んだ。
なんの準備もしていなかったのに。
バインダーさえ、持っていなかった。
翌朝、簡単な点検を済ませ、バイクで運輸支局へ向かった。
広い敷地に、大きな建物がいくつも点在している。どれが何の建物なのか、見ただけでは分からない。
とりあえず、事務所らしい建物へ入った。
ユーザー車検の窓口で渡されたのは、何枚もの書類だった。
記入見本はあった。しかし、初めて見る書類には、どこに何を書けばいいのか分からない箇所がいくつもある。
そのたびに聞きに行く。窓口も混んでいる。
全部を書き終えるまでに、四十分ほどかかった。
ようやく書類をそろえ、今度は検査場へ向かった。その書類の束は、検査が終わるまで持ち歩くことになる。
バインダーを持ってくればよかった。
そう思って周りを見ると、当然のようにみんな持っていた。
こんな小さなことさえ、行ってみるまで分からなかった。
最後の検査で、引っかかった。
検査場には何本かのラインがあり、そのうちの一本がバイク用だった。
まず、ラインに入る前に車体の確認を受けた。
ライトや方向指示器を操作し、車台番号などを確認してもらう。排気ガスの検査もあった。
ここは、すんなり通った。
そして、検査ラインに入った。

係の人がずっと隣について、一つずつ進めてくれるわけではない。アナウンスに従って自分で操作をしながら、順に検査を受けていく。
ここから先はバイクに跨ったままだ。まず床にある溝にタイヤを入れる。そこから、ほんの数メートルの間で、いくつかの検査が続いた。
なんだ、これなら簡単じゃないか。
そう思い始めたところで、最後の検査に引っかかった。
不合格だった。
ここまで来たのに。
がっかりしていると、係の人が、午後も検査があるから、直してもう一度受ければいいと教えてくれた。
私は、その仕組みを知らなかった。
その日の検査は、初回を含めて三回まで受けられる。不合格だった箇所には、あと二回、受け直す機会があったのだ。
一度引っかかったら、全部終わり。
そんなふうに思っていたのは、私のほうだった。
朝と同じバイクが、少し違って見えた。
結局、その日のうちに、私は新しい車検証を受け取ることができた。
建物を出て、自分のバイクのところへ戻る。
朝、ここへ来たときと、同じバイクだった。
けれど、帰りには、それが少し身近なものに感じられた。
かかった費用は、二万円を切っていた。
当時の私には、十分にうれしい金額だった。店に頼んだ場合との差額で、新しいヘルメットを手に入れた。
ただ、今でも覚えているのは、お金のことばかりではない。
自分で来て、自分で手続きをして、不合格も経験して、それでもその日のうちに終えられた。
やってみれば、そういう一日だった。
私は何を、それほどためらっていたのだろう。
手順が分からないことも、不合格になることも心配だった。けれど、その奥には、もうひとつあった気がする。
この歳になって、人前でもたつきたくない。
何も分からず、格好の悪い思いをしたくない。
ところが、実際に行ってみると、周りの人は誰も他人ことなど気にしていない。
私が書類に手間取っていても、誰かがじっと見ているわけではない。検査ラインも、自分とバイクだけで先に進んでいく。
寂しいくらいだった。
一方で、同じように自分のバイクを持ち込んでいる人たちには、どこか仲間意識のようなものがあって、みんな親切だった。
今も、心の中で少し胸を張っている。
初めてのユーザー車検は、十年ほど前のことだ。
それから五回、車検を受けている。その後も二度、検査に引っかかったが、毎回、その日のうちに新しい車検証を持ち帰っている。
店に依頼していた場合との差額は、私の場合、これまでに二十万円以上になったと思う。正確に積み上げた数字ではないが、私にとっては大きなお金だ。
そして、バイクの話をするとき、今も心の中で少し胸を張っている。
私は忘れない。
次は、自分のバイクで。
準備から、当日の終わりまで。
初めて行く前に、知っていたら助かったことが、いくつもあった。
書類を書くのに、何を見ればいいのか。受付を済ませたら、次はどこへ行くのか。
検査ラインでは、何をするのか。もし不合格になったら、そのあと、どう動けばいいのか。
バインダーを一枚持っていく。そんなことも、そのひとつだった。
私が用意したのは、これから初めてユーザー車検を受ける人が、準備から当日の終わりまでを順番に確認できるWebサイトだ。

- 出かける前に
- 予約、必要書類、受検前の確認事項を、準備の順に。
- 書類を書くときに
- 申請書の記入見本と、各欄の説明を確認できます。
- 検査場に着いたら
- 受付から検査ラインまで。当日の流れと、行うことを写真とともに。
- 不合格になったら
- テスター屋の利用方法、再検査、当日中に終わらなかった場合の対応。
この話では省いた、私が引っかかった検査と、その対処についても説明している。
自宅ではパソコン。
当日はスマホで。
自宅では、パソコンで当日の流れをたどる。
車検場では、スマホで書類の見本や、次に行うことを確かめる。
そのために、PDFではなく、Webサイトの形にした。閲覧にはインターネット接続が必要です。
私の体験を読んで、「一度、自分でも受けてみたい」と思った方に、使ってもらいたい。
何から調べればいいのか分からず、いくつもの記事を行ったり来たりしている方にも。
バイクユーザー車検・準備から当日までのWebガイド
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初めてバイクのユーザー車検を受ける方に向け、準備や書類、検査場での動き方を整理したガイドです。車両の状態によって必要な対応は異なり、合格を保証するものではありません。
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本ガイドは手続きと受検の案内です。個別の車両診断や社外品パーツの適合判定、合格後の安全性を保証するものではありません。点検・整備について判断に迷う場合は、専門店へご相談ください。
不安がゼロになるのを、
待たなくてもいい。
準備が整った日は、自分で作れる。
あの朝の私が、出かける前に開けたらよかったと思う案内を、ここにまとめた。
